私は耳が良いほうらしく、18.5kHzぐらいまでの音を聞き取ることができます。音楽関係の仕事が多いため周りにはミュージシャンが多いのですが、スタジオで仕事をする際に、どこまで獣レベルで聞こえるかという競争(?)のようなものをよくするのですが、ほとんど負けたことがありません。おおよそ大多数の人は14kHzあたりで聞き取れなくなるようです。はい、獣耳です。
さて、先日、私が所蔵するVHSをデジタル化しました。昔のNHKのアナログハイビジョン放送を録画したものをデジタル化したのです。毎年スイスで行われているMontreux Jazz Festivalの1998年の模様です。私の父が画面の専門家だった関係で、早い時期からアナログハイビジョンに対応したブラウン管テレビがありました。
デジタル化に際しては、母体が放送会社である当社が持つ業界最高クラスの映像と音声それぞれの録画機と録音機を使ってみました。出来上がったものは非常に品質が良く、自分一人で満足しておりました。
ところで、デジタル化したのにはもう一つ狙いがありました。VHSに記録されている音には途中でブラウン管の高音ノイズが記録されているのです。これを取り除きたい。
しかしよく考えてみると不思議でした。なぜアナログハイビジョンであるにもかかわらず、ブラウン管の高音ノイズが記録されているのでしょう?
当時の日本のアナログ地上波はNTSC方式で、水平同期周波数が15750Hz(=15.75kHz)であったために、水平駆動コイルやトランスが振動して、この周波数の高音ノイズを発生させます。この高音ノイズは外部に出力される音声信号にも混入していました。お気に入りの演奏に混入したこのノイズは、異様に感度の良い私の耳には不快きわまりない音なのです。
…しかし…アナログハイビジョンはNTSC方式ではありません。もっと高音の聴き取れない高さのノイズが発生するはずです。これはどういうことなのでしょうか?
考えてみたらこういうことでした。若い頃の私が録画に使ったアナログハイビジョン対応だと思っていたテレビは、見かけはワイド画面ですが、普通のNTSC信号に変換された映像を表示するテレビだったのです!ハイビジョンじゃない!